友愛労働歴史館が開催中の企画展「松岡駒吉―ひとすじに労働者の利益を守った男―」(2018.7.6~12.21)の主人公松岡駒吉は、労働運動家・政治家として知られている。しかし、クリスチャンとしての側面や日本YWCAの創立者キャロライン・マクドナルド(一八七四~一九三一)との交流は、余り知られていない。
キャロライン・マクドナルドの評伝『東京の白い天使―女性宣教師キャロライン・マクドナルド』(M・プラング著、鳥海百合子訳。教文館。1998年刊行)によれば、マクドナルドは一九〇四(明治37)年に来日し、親隣館(東京港区)を拠点に宣教師として活躍する。
当時の日本は労働運動非合法の時代で、正当な労働争議でも逮捕され、収監される労働者・活動家が数多くいた。マクドナルドはこのような刑務所帰りの人たちの社会復帰を助ける活動にも取り組んでおり、そこで松岡や総同盟の活動家との関係が生まれていた。一九二一(大正10)年初秋、松岡駒吉は親隣館にキャロライン・マクドナルドを訪ね、「刑務所に入っている組合の指導者たちの福祉」について話し合ったことから、二人の間に「尊敬と友情」が芽生えた。一時、キリスト教から離れていた松岡駒吉は、マクドナルド女史の親隣館に毎週のように通い、英語と聖書の集会に参加した。
松岡との友情から労働運動、総同盟との深い関係が生れたC・マクドナルドは、一九二七(昭和2)年の野田醤油争議のときには現地に駆け付け、争議団員を前に激励演説を行っている。また、松岡駒吉が一九二九(昭和4)年、ILO総会に日本労働代表として参加した時には、マクドナルド女史は全行程に同行し、通訳として松岡を支えている。一九三一年、帰国したマクドナルドが死去したとき、松岡は長文の弔辞を贈っている。
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